KTS Tune-O-Matic Saddles の作り方

写真は KTSのチューン・オー・マチックサドル PR-02 、 Gibson® Vintage ABR-1 Tune-O-Matic に対応するサドルです。原材料には、真空アーク溶解炉にて産まれた大きな鋳塊(インゴット)をさらに分塊、圧延した展伸材(wrought products)と呼ばれるチタンワイヤーロッドが使用されます。数回にわたる冷間圧延工程により、そのワイヤーロッドはサドルの側面からみた形状に成型されていきます。

この金太郎飴の様なロッドをサドルの巾にカットしていけば良いのですが、ロッドは圧延によって硬度があがり、金属内結晶粒に歪みを生じ組織的に不安定な状態になっています。そこでこの金属内部に発生したストレスを開放するため、高温のアルゴンガス雰囲気内で一定時間、アニーリング(annealing)という熱処理が施されます。これを固溶化熱処理とも呼ぶのですが、圧延加工によって現れた析出物等が組織に溶け込んで金属として一番安定した状態になります。そしてようやく最後の切削工程へと進むわけです。(写真は PR-06 Nashville style sddles

”だからどうなのよ?”と思う方もいらっしゃるでしょうが、これが非常に大事な事であり、KTS のポリシーでもあるのです。

実は 1997 年に開発した最初のプロトタイプにおいて我々はこの最終熱処理をしませんでした。それでも既存の亜鉛ダイキャストサドルと比較して明らかな音質の変化がありサスティンの著しい向上が認められ、我々としては ”こいつは凄いものをつくったぞ!”と思ったものです。しかしながら、その後サウンドチェックを繰り返す過程において、時たま金属的な、英語で言う所謂 harshly な高域が現れるという意見がプロフェッショナル達のあいだから出てまいりました。そこで我々は金属内の圧延加工によるストレスを除去し、素材として安定した柔らかい状態にすれば良いのではと考えたわけです。

結果は明白でした。ブライト感の中にあきらかな中域のふくよかさが現れ、我々の目指す “明るく暖かみのあるトーン”に変身してくれたのです。


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